自分の音をよく聴く

チェロを始めたら、すぐにでもアマチュアオーケストラなどに所属した方が早く上達する、という先生もいらっしゃいます。一方で、ポジションの位置や指の正しい形をきちんと理解し、ある程度マスターしてからアンサンブルを始めた方がよい、という先生もいらっしゃいます。

私の場合は、自分自身の経験から、後者の方を生徒さんにはお薦めしています。

私がチェロを始めたときは、幼い頃からピアノをやっていたこともあり、「単旋律のチェロなら、すぐに弾けるようになるだろう」と、かなり安易に考えていました。

ところが、ポジションもフィンガリングもよく分からない状態で、アンサンブルやアマチュアオーケストラに所属してしまったので、本当に大変でした。

とにかく「周りに迷惑をかけてはいけない」という思いが強く、音色や多少のピッチのずれは意識的に無視して、とにかくみんなのテンポについていくことばかりを考えて練習していました。

それを数年続けてしまったため、自分の出している音やピッチが多少悪くても、あまり気にならなくなってしまったのです。

これは、チェロを弾く上では大きな問題でした。

どんなに弾き方のコツを教えてもらっても、そもそも自分の音をきちんと聴けていなければ、なかなか上達にはつながりません。

「聴く耳」を取り戻すために、私はそれまでチェロに費やした時間と同じくらいの時間を要してしまいました。

だからこそ、うちの生徒さんには、私と同じ失敗を繰り返してほしくないと思っています。

先へ先へとどんどん進むことよりも、まずは「自分が今出している音は心地よい音なのか」「ピッチは合っているのか」と、自分の音をよく聴くこと。
もし「今の音はちょっと違うな」と感じたら、もう一度やり直してみる。
そんなことを、レッスンでも何度も伝えています。

SUZUKIの1巻を弾いていても、今の生徒さんたちは、私の1年目の頃よりはるかに綺麗な音色で弾いています。

教える立場になった今、私自身も改めて、「音を聴く」ことの大切さを痛感しています。

チェロは、音を出すだけなら音符を追って弾くことができます。でも、自分の音を聴きながら弾くことができるようになると、チェロとの付き合い方が少しずつ変わってきます。

私自身の経験が、生徒さんたちのこれからのチェロの時間に、少しでも役立てばと思っています。